お香たて【HAND】再製造についてvol.2
2023年にご好評をいただきながらも、制作方法の制約により生産を終了したお香たて【HAND】。このたび、特殊な形状にも対応できる型制作・成型の職人と出会い、型による再製造が実現しました。
今回も原型制作は、陶作家のMO'STOさんに依頼しています。
再製造にあたり、単なる前回の再現ではなく、これまでのHANDを踏まえながら新たにコンセプトを再構築しました。(詳しくはvol.1をご覧ください)
HANDのコンセプト
「日本的な柔軟性と西洋的な写実性が融合した手」
「とろける時間をどことなく感じさせる佇まい」
本記事では、それらをかたちにしていく原型制作の過程を辿ります。

-手のかたちについて
まず着想の起点となったのは、「柔軟性を感じる手」というイメージでした。緩やかな手を想起した時に観音像が浮かび、いくつかの観音像を調べる中で辿り着いたのが、法隆寺に安置されている百済観音像です。
百済観音像の手は、指先に向かって自然に細くなり、手首から指先までが途切れない流れとして感じられる、静かなしなやかさを持っていました。
一方で、指の細さや輪郭の鋭さは、Meltの持つやわらかいニュアンスとわずかな距離も感じさせます。そこで、百済観音像の流れるような造形をベースにしながら、もう少し体温のある表現を探ることにします。
ヒントになったのは、日常的に触れているアニメーションの表現でした。
キャラクターの手は写実をベースにしながらも、わずかにふくらみを持たせることで、やわらかさや親しみを自然に感じさせています。

この2つの要素「百済観音像の持つ静かな流れ」と、「アニメーションに見られる有機的なやわらかさ」を重ね合わせることで、Meltらしい手のかたちを定めていきました。
ここからは、再構築したコンセプトがどのように原型へと落とし込まれていったのか、その変遷を写真とともに追っていきます。
-手原型作成(ver1)

洗練されつつ、しなやかなで少し丸みを帯びた指。

上から見ると少しもったりとした印象があります。

指の角度が立ちすぎていて、どことなく固い印象があったので、角度を調整することで、柔らかい印象へ。
-手原型作成(ver2)

指の角度と肉付きの雰囲気を調整し、理想的な形状へ。

指の関節や手の皺の雰囲気などをはっきりさせることで、上から見た時の印象がver1よりもすっきりしました。
ver2で手の形が決まり、次は土台の形に移ります。
テーマの一つ「とろける時間を感じる雰囲気」を表現するため、溶け感のある台座をイメージし形を作ります。
-台原型作成(ver1)

リアルな溶けを考えると、重力に引っ張られるため土台部分は広がっていかないといけません。ただ、この丸の部分にくびれがあると全体的にもっさりとした印象になってしまいます。
-台原型作成(ver2)

くびれの部分は無くし、手の付け根部分のみとろけさせました。
-台原型作成(ver3)
手と土台の付け根部分をどうするかの検討です。

左のように付け根部分を外に広げていくか、右のように少し手のくびれを残すのか・・・
現実的には左のようになるはずですが、手の形のニュアンスが消えてしまう気がしたので、右のように少しくびれを残すことにしました。

そうして、現在の原型にぐっと近づく形になりました。
-土台の形状

前回のHANDではアメーバをイメージしたような形状にしていました。
ただ、今回のHANDは前回のものより手が大きく、より洗練された雰囲気を目指しています。
前回の形状はPOPイメージが強い気がするので、土台の形も変更することにしました。

いくつかの形状を検討し、溶け感と洗練度のバランスがいい形を作成しました。
こうしてHANDの原型が完成しました・・・!

-HANDのかたちの魅力
①溶け感へのこだわり

溶け感の表現に一番時間をかけています。どのように手が溶けているのか?粘度は?素材は?といった点を深掘りながら形を作り上げました。特に手と土台の接点は特に時間をかけ表現しました。
②右手であるということ

前作のHAND。実は左手なんです。MOSTOさんの利き手の関係で、制作するもののほとんどは左手になるのですが、型で制作するからこそ一つの形に時間をかけて「右手」を再現していただきました。1点ずつ右手を作成しようとすると左手より何倍も時間がかかってしまうそうです・・・!
③流麗ながらぬくもりのある指

前述のように、百済観音像をベースに、アニメーションで描かれるような少し丸みを帯びた指をイメージして作成しました。すらっと洗練された線で描かれる、温かみを帯びた指の雰囲気を楽しんでいただきたいです。
次回の記事では型で量産するための、型作成、そして生地作成の様子をお見せできればと思っています!
ここまで読んでいただきありがとうございました。vol.3をお楽しみに!