お香たて【HAND】再製造について vol.1
-HANDについて

【HAND】は、2023年6月から12月まで販売していた「手」をモチーフにしたお香たてです。型を使わず、一つ一つ手作業で形を整え制作されました。
Meltというブランドを想起させる、指から垂れる溶けた雫が、緩やかな時を過ごすというテーマと重なります。
「手」という肉体的な温かみのあるモチーフを、陶器という冷たさのある素材で表現することで、インテリアとして部屋の中で存在感を放つ作品となっています。
陶作家であるMO'STO様とのコラボという形で製造していましたが、制作方法による量産の難しさやその他事情により、多くのお客様に愛されながらも、2023年12月に一度生産を終了することになりました。

-HAND制作にたどり着くまで
「どんな形でも作ってみますよ」
そこから2年ほど、再度リリースができないか方法を模索しましたが、複雑な形ゆえに型としての再現が厳しく、再製造は難航しました。特に雫部分と台座部分は型から抜き出すことができないので、形を変えるしかないと言われてしまいます。
そんな折、2025年春にMO'STO様より複雑な形に対応していただけるかもしれない製型所様と製陶所様を紹介していただくことになりました。
期待と不安を胸に、形について相談させていただいたのですが、「どんな形でも作ってみますよ」と二つ返事で了承いただけました。
「より理想的な形を模索して作りましょう」
せっかく新しく型を作って製造するのであれば、前回では再現することのできなかった点を踏まえ、より理想に近い形を作りましょうとMO'STOさんよりご提案いただきました。
Meltが目指す理想の形とMO'STO様の作家としてのこだわりや魅力をどのように表現するか、試作を作りながら幾度かの話し合いを重ね、新しく作るHAND制作に際してのテーマが決まりました。
「日本的な柔軟性と西洋的な写実性が融合した手」
「とろける時間をどことなく感じさせる雰囲気」
この2つのテーマをもとに、MO'STO様に形を作り上げていただきました。
-HANDのテーマ
「日本的な柔軟性と西洋的な写実性が融合した手」

Meltというブランド名から想像される、溶けや融合といった概念をデザインに落とし込む際に、「手」をどのように解釈するのかとても悩みました。仏像や彫刻、日本画や西洋画など様々な手を観察してみたんです。
仏像や日本画に描かれている柔らかくふっくらしたような印象の手。
彫刻や西洋画などで表現されるスリムでシュッとした印象の手。
Meltは、イラストや気分など様々な世界を香りで表現しています。それは、香りと世界の融合であり、バランスの取れた調和でもある気がしています。
そこを起点にMeltらしい形を模索し、柔軟性と写実性が融合した形なのではないかという結論に至りました。
そしてそれは、漫画やアニメ、ゲームで表現されているような、デフォルメされていて、線が流麗で、それでいて写実性を持つ手でした。
「とろける時間をどことなく感じさせる雰囲気」

私たちMeltが届けたいのは「とろけるような時間」です。
「手」という身体的なモチーフに自分を重ねて、ゆったりとした時間の経過を感じてもらいたいと考えていました。
そのために、指から垂れる雫の形や絞り、台座と手の接着面の緩やかなカーブ、そして台座そのものの形など、全体的な溶けの雰囲気を前回以上にこだわり作り上げることに決めました。
まるで空間や時間、香りが自分と重なり溶けていっているようなそんな時間を「HAND」を通して体験してもらえたらと思っています。
-今回の開発におけるパートナー
MO'STO(原型制作)
陶作家。型を使わない一点ものを中心に制作。
作品販売の他、ブランドやメーカーとの共同制作や、体験装置としての作品展示やワークショップ など。
WEB:https://mosto-cera.studio.site/

黒田製型所(型製作)
1978年創業。美濃焼の産地・岐阜県土岐市で石膏型を専門に製作しています。器づくりを支える大切な“型”を、職人の手仕事で丁寧に形にしています。

金重渡辺製陶所(成型)
1890年創業。近年少なくなってきた伝統製法、ガバ鋳込み(排泥鋳込み)成形で、一つ一つ手の手作業で陶器の生地製造を行なっている。

-商品販売スケジュール
2025年
6月 原型制作開始
7月 型制作開始
11月 サンプル完成/予約販売開始
12月 一般販売開始
-終わりに
vol.1では、再製造までの流れと新しいHANDのテーマについて書かせていただきました。次回は、実際に原型を作る中でこだわった点についてご紹介できたらと思っております。次回をお楽しみにお待ちいただけると嬉しいです。